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子育てイルカが笛を吹く

水族館飼育員が子育てのコト、動物のコト、おすすめ水族館・動物園のコトを書いています

SNS上での承認欲求が原因で希少な野生動物を絶滅させるかもしれない話

動物園・水族館 動物園・水族館-動物ニュース

【追記2016/5/2013:30】

本文中に転載しているバイソンをSUVに載せた画像を撮影した Karen Olsen Richardson氏は、たまたま一緒にいた旅行者で、このような愚かな行為を批判し、拡散するためにこの写真を撮影したようです。彼がバイソンを保護したわけではありません。

 

先日、米イエローストーン国立公園内で「寒そう」との理由で保護されたアメリカバイソンの子獣が、保護したことをきっかけに母獣が育児放棄をして、その結果、安楽死させられたというニュースがあった。

headlines.yahoo.co.jp

僕の率直な考えとしては、安楽死してしまうあたりがアメリカ的だな~って感じです。

 

このあたりに生息するアメリカバイソンは、先史時代に大量に狩られ、いまでは貴重な種で、6000万頭いたのが4900頭ほどしか生息していないようですね。アメリカ国内の動物園でも、同種が飼育されているとのことなので、安楽死せずにどうにかならなかったのかな~と思うところはあるのですが……。(静岡の日本平動物園にもいるよ)ま、自然保護と個体保護は全くの別物ですしね。

保護した人たち(親子)に対しても当然のごとくバッシングがすごいようです。保護したときの状況がわからないので何とも言いようがありません。画像を見る限りでは、子獣はモフモフしているので寒そうには見えませんが、人間が近づいて母子分離できる時点で、母獣は育児放棄しているようにも思うし……。本当に親子には子獣を助けたい気持ちはあったんだと思う(願う)。

でもひとつだけ気になることがあるよ

f:id:kosodateiruka:20160520065848j:plain

Facebook: Karen Olsen Richardson

この手の話は今に始まったことじゃないんだけど、近年すごく増えてきていると思うんですよね。僕はその理由がSNSの普及が関係していると思うわけです。

野生動物を保護するってことは、非日常的ですから、そりゃ保護したらそれを画像や動画でにとって、TwitterやらFacebookに投稿したくなりますよね。ま、投稿したい気持ちはわからないでもないですよ。そしてそれをSNSにあげれば、おそらく多くの方がシェアや「いいね」してくれることは誰だって想像できるしね。それでなんか自分が認めらえてる、すごいことをやってのけたと承認欲求が満たされるわけです。

一見するといいことをしているように見えるけど、じつは、自分の承認欲求を満たしている(満たしたい)だけで、結局動物たちは迷惑しているだけで…。

ウミガメを助ける動画

この動画知ってますか?(ちょっと閲覧注意)


Removing a plastic straw from a sea turtle's nostril - Short Version

僕がこれを知ったのはFacebookだったんですけど、ご覧のとおり再生回数170万回を超え、拡散された動画を合わせると200万は超えている。

そして、「カメを助けてありがとう」とか、「ゴミを捨ててはいけないね」とかって意見がでて、すごく盛り上がってるんですよね。 確かに環境保護を訴えるのには良い投稿なのかもしれないんですけど、当のカメ自身は、この後どうなったのかって気になってしまうんですよね。

どういう経緯でこの人たちが処置したかは知らないけど(めんどくさいから調べてない)、動画を見る限りでは、あきらかに道具のない状態でストローを取り除いているし、結果的にはとれてるけど、なんか少し残骸も残っているように見えるし、出血もすごいよ。動画も途中で終わってるので、今どうなったかは分かんないし。

僕自身はカメは専門外ですが、おそらく水族館で保護していたとしたら、レントゲンで異物を確認して、軽く引っ張って取れなければ口腔内からアプローチしてストローを除去、出血がある場合は消毒と抗生剤の投与。健康状態と処置後の経過を観察して、標識タグを付けて海にリリースするっていう流れになるんじゃないかな。

ちゃんと処置してあげないと、リリース後にすぐ死んじゃうことだってあるし、これぐらいのウミガメでもちょっとでも「カプっ」てかまれたら指なくなりますよ。事故起きてからでは遅いですから。ま、こんなことする人たちだから指かまれたら、助けるために命はりましたってSNSで自慢するんでしょうけど……。

でもね、これ、外国の話だけじゃないんですよ。

日本でも時どきイルカが浜辺に打ち上げられたりする

これもたまたま回ってきた記事なんだけど、

ameblo.jp

どうやら、茨城の波崎でイルカを保護したようなんです。砂浜に打ち上げっているイルカを保護して、何度も海に帰そうとしたけど戻ってくるから、車に乗せて近くの港でリリースしたみたい。これもFacebookで2000件近くシェアされています。

何度も海に帰したけどやっぱり戻ってくるって、普通に考えてイルカは何らかの体調の異状があったはずなんです。おまけに担ぎ上げられても大人しくしているってことは衰弱している可能性もあるしね。そんなイルカを港にリリースして、キューキュー鳴いて泳いでたからと言って、「無事に帰れたね。よかったよかった」って話にはならないんですよね。

画像を見る限りでは、イルカをそのままの状態で車で運んでいるように見えるけど、イルカは水から上げると痙攣おこしたり、いくら弱っている状態でも死ぬ直前は呼吸ができない苦しさで大暴れすることだってあるんですよ。そんなのが運転中に車内で起きたとしたら、いくら小さなイルカでも窓なんて軽々と割れるだろうし、車内は悲惨な状態だし、大事故につながる可能性だってあるんですよね。

動物のためと良かれと思っても…

どの人たちも動物のことを「助けたい」って気持ちは本当に素晴らしいと思うんですよね。でもね、こういうことを良かれと思ってやったりとか、承認欲求のために動物保護が利用されたり、こういう動画が拡散されていくことによって、きっと人がケガする事故が増えたり、アメリカバイソンのような悲劇が増えていくと思うんですよ。野生動物のレスキューってのいうのは 、専門家でもすごく難しいことなので、動物園や水族館で見たことある動物で、かわいい顔してたとしても本当の彼らを知らないのであれば、近づかないことがベストなんだと思いますよ。もちろん承認欲求のためなんてもってのほかですし、純粋に助けてあげたいって気持ちが強くてもやっぱり近づかないでくださいね。

もし手助けが必要な野生動物がいれば、各種動物のプロが、動物園や水族館には必ずいるので一報ください。。陸上動物なら動物園、海や川なら水族館に連絡入れてください。110番でもかまいません。そうすることが結果的に動物たちを助ける最善の方法になるのですから。

最後に

で、結局何が言いたいかというと、こうなっているのもすべて動物園・水族館の責任なんですよってこと。もっともっと、動物たちのことや保護することの難しさ、最善の方法をしっかりと一般の方たちに教育してかなければ、ダメですよってこと。

僕も次のイベントで、イルカの保護についてやってみようかなと思います。