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子育てイルカが笛を吹く

水族館飼育員が子育てのコト、動物のコト、おすすめ水族館・動物園のコトを書いています

水族館からシャチがいなくなる!?米シーワールドがシャチの繁殖中止を発表した。

動物園・水族館 動物園・水族館-動物ニュース

 アメリカ最大の水族館「シーワールド」がシャチのショーの中止に続き、繁殖を行わないことを正式に発表しました。

www.cnn.co.jp

以前こちらの記事「米シーワールドが「シャチショー」を完全中止するにあたって思うこと 」でも書きましたが、このニュースを見て、非常に残念であると同時に、シーワールドのすごさを改めて感じました。今日はこのニュースをみて感じたことや水族館とは何かについて、僕なりの考えを書きたいと思います。

水族館とはなにか

水族館ぴあ 全国版 (ぴあMOOK)

日本には62園館(日本動物園水族館協会加盟)もの水族館があります。(参考:動物園と水族館

水族館とは、魚類をはじめ海や川に暮らす水棲動物を飼育し、多くの人々に見てもらう施設です。水族館の大きな役割として4つのことが挙げられます。

  1. レクレーションの場であること
  2. 教育する場であること
  3. 自然保護・種の保存する場であること
  4. 研究する場であること

と、されております。我々、水族館で働く飼育員は常にこれらの4つを、念頭に置きながら働いているわけです。

なんのために動物を飼うのか

多くの飼育員が勘違いしていることだが、水族館が動物を飼育し、多くの人に見てもらう理由は「人間のため」です。それしかありません。言いかえると「動物のため」ではないということです。家畜(牛やニワトリ)は人間の食用のために飼育され、ペット(犬や猫)は、一昔前までは番犬やネズミ対策のためであったが、現代では飼い主の寂しさや愛玩欲のために飼われています。水族館での野生動物の飼育は、多くの人々が見たいという欲望、知識欲を満たすために飼われているのです。

1、のレクレーションの場であることはまさに人間のためです。人々の楽しみや驚きの場を提供することが水族館の大きな役割です。ダイバーや漁師、船員ですら見ることの少ない動物を、ハイヒールを履いた人にでも見てもらえる場所です。「こんな大きなものが海にはいるのか」と人々が驚き、喜び感動する場所、それが水族館なのです。

2、の教育の場であるということは、教育に活用することができる場所だということです。特に小中高生の理科や社会、自然保護学習や環境教育にはうってつけの場所です。その結果、自然を大切にする人が増えて、動物のためになる可能性はありますが、それは間接的な結果であって、基本的には人間のための教育の場であります。

3、4では、自然のフィールドの生態調査や浜辺などに打ちあがった死体を材料とした研究では多くの情報を得ることができず、多くの時間やお金を費やします。しかし水族館では簡単に多くの情報を彼らから手に入れることができます。それらの研究結果が、自然保護や種の保全に役立ち、動物たちのためになっていることは間違いないでしょう。しかし、それはあくまでも僕たち人間の勝手な思い込みであって、動物たちが望んだことでも同意したことでもありません。

動物たちは人間の娯楽や教育のために、強引に捕まえられ、狭い水槽で飼育される。動物たちに最適な環境を用意し、栄養・健康管理を行い、種の保全や研究に取り組むことは、僕たち飼育員や研究者の知的欲求を満たすのと同時に、動物たちに対する罪滅ぼし、贖罪する当然のおこないであると僕は思っている。

水族館がなくなるとき

当然、世の中の大半の人が水族館は必要ない、野生動物なんて見たくないという声が大きくなれば水族館は閉館すればいい。逆に見たいという声がある限りは水族館は存続しつづければいいだろう。そして存続する以上、売り上げの一部を使って種の保全・研究をやりつづけることは義務だと思う。

米シーワールドは、2013年に公開された映画「Blackfish(ブラックフィッシュ)」の影響によって、2014年は総入場者数が前年比17%減少し、2015年度はさらに4%落ちた。株価もこの3年で半値まで暴落した。

シーワールドは今後、段階的にショーを中止し、より自然に近い形でシャチを展示していくようだ。現在妊娠している個体を最後に繁殖すらも中止することを決めた。それでも、売り上げがないのであれば、その時は閉館するときなのだろう。

しかしこれだけは知っていてほしい。多くの人が、米シーワールドが保護団体に屈したと思ったのではないだろうか。決してそうではないと僕は思う。 

シーワールドはやっぱり世界一である

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シーワールドの最高責任者CEOは、今回の決定は顧客離れが原因であることを明言している。

さらに、カリフォルニアのシーワールドは、現在の倍に相当する水槽(3万8000立方メートル)の建設を3億ドル(335億)かけて行う予定だった。それによる集客増も十分見込めていただろう。しかしカリフォルニア州がシャチの繁殖と移動を中止しなければ工事を許可しなかったのである。これが、今回の決断に至った大きな理由であろう。

米シーワールドは、3つの施設でシャチを飼育し、40年前から野生個体を捕獲していない。それどころか何頭も繁殖に成功しており、現在29頭のシャチを飼育している。僕が見る限りでは水槽はかなり窮屈になっている。新たに水槽を作らなければ、繁殖できても入れておく場所がない。彼らが繁殖をしないと宣言はしたのは、繁殖することが今いる動物たちにとって悪影響になると考えたのではないだろうか。

売れば一頭5億もの値が付く動物でも、保護団体のせいでアメリカ国内では買い手はいない。海外に売れればいいが、そう簡単にはいかない。おまけに新しいプールも作れないのだからしょうがない。

それと同時に、今は繁殖できなくても、Goサインさえあれば、いつでも繁殖させる技術と自信が彼らにはあるのだろう。そして今後10年後か20年後かわからないが、またシャチを見たいという人は必ず増えくると彼らは予測しているのだと思う。その時には当然のように、繁殖を成功させシャチを増やせるのだと思う。

今いる個体が寿命で死亡し、水族館の飼育個体が少なくなれば、必ず繁殖のGoサインは出るだろう。人間の動物を見たいという欲求は絶対になくならない。見れなくなればなるほど、その欲求は大きくなる。その時にそなえ、米シーワールドには今は繁殖はやめても、シャチを飼育し研究はやり続けてほしい。(言わなくてもやるだろう)

日本の水族館はどうする

日本の水族館の年間入場者数は毎年3000万以上に上る。動物園とあわせれば年間7000万人もの人が来場する。しばらくはこの人たちが減ることはないだろうが、安泰できるわけではない。

昨年度より日本でもイルカ漁の問題で、日本動物園水族館協会(JAZA)に加盟する水族館は野生個体の捕獲ができなくなった。今後は繁殖して増やしていかなければいけない。存続すら危ぶまれている水族館も多い。そのため、いくつかの水族館はJAZAから退会してでも、イルカを捕獲しようとしている。また新たな団体も作っている。

www.asahi.com

アメリカは外圧的要因とはいえ、今回のような大きな転換期を何度も乗り越えてきた。そのたびに、飼育技術を大きく発展させてきた。今回のことでさらに、大きく成長していくだろう。

日本の水族館は何をしているのだろうか? アメリカに追いつけ追い越せで頑張っているが、まだまだ背中すら見えていない、そんな状況だと思う。

我々飼育員は、動物を飼育することをきれいごとだけで語るのではなく、悪行をしていることを自覚し、精進していく必要がある。より一層手を取り合って、自然保護・繁殖・研究することによって罪滅ぼしをしていかなければならないと思う。

動物保護団体さんへ

「動物のため」を公言されるなら、どうか動物のためになることをしてください。今回の件もそうですが、あなたたちの活動が、いかにして動物のためになっているかを科学的根拠を用いて説明してください。

ロシアでは、戦争のためにイルカが使われるそうです。相手がロシアだとダンマリを決め込むつもりでしょうか? これでは弱い者いじめですよ。

newsphere.jp

保護団体にお金を寄付する人も、どうかお金の使われ方を確認してください。あなたの寄付金が日本でどう使われているか知っていますか? 彼らは抗議活動をしているふりして、温泉旅行であそんでいますよ。お金のために保護活動をするのなら、どうかそれを公表してください。

そして頭がいいから、知性が優れているからという理由で、動物たちの生命を差別しないでください。どうかすべての動物の命を、平等に見てください。

米シーワールドへ

僕は今でもシーワールドに憧れ、目標にしています。シーワールドのように、お客さんに驚きや感動を与え、子供たちを教育し、傷ついた野生動物に治療を施し、世界各国の水族館に研究成果を惜しみなく提供する、僕もそんな水族館を作り上げていきたいと思っています。(シーワールドは年間1000万ドル(約12億円)をつかって、野生動物保護活動をしています)

工事許可が下りてシャチにとってより快適な施設ができることを、楽しみにしています。

参考図書

お詫び

午前中に、この記事を書いている途中で公開してしまいました。お見苦しいところを見せてしまい申し訳ありませんでした。