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子育てイルカが笛を吹く

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米シーワールドが「シャチショー」を完全中止するにあたって思うこと

動物園・水族館 動物園・水族館-動物ニュース

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先日、アメリカで最も大きな水族館であるシーワールドが、シャチのショーを段階的に廃止することを発表した。今後は代わりとなる「教育的なアトラクション」が導入されていくらしい。

日本でも近年は捕鯨問題や水族館でのイルカを飼育することに批判があるが、アメリカでのそれは日本とは比べモノにならない。水族館には大勢の人が営業妨害まがいの抗議活動をしたり、隠しカメラをしかけて監視したり…。特に近年はシャチのショーに激しい非難があった。

2010年女性調教師の死亡事故

フロリダ州オーランドにあるシーワールドにて女性調教師(40)がシャチに襲われ死亡する事件が起きた。ショーの最中に彼女の髪の毛をくわえ水中へと引きずり込んだのだ。他の調教師も救助しようと試みたが、シャチも彼女を離すことなく、外傷性ショックと溺死してしまった。この調教師を死なせたシャチは、これが一人目ではありませんでした。以前、閉園後の水族館に忍び込んでプールで泳いだ一般人を殺していた過去があるのです。

シャチの飼育を批判する映画

この事故後、一本のドキュメンタリー映画が製作された。調教師を殺したシャチ、シーワールドの元調教師、専門家のインタビューや裁判記録、そして死亡した女性調教師などの映像を盛り込んだ「ブラックフィッシュ(Blackfish)」である。この映画は「ザ・コーブ」と同様、保護団体から圧倒的な支持を受け、アメリカをはじめ多くの国で大きな反響であった。そしてシーワールドへの激しい非難へとつながっていくのである。もちろん、この映画は昨年おきた日本に対する捕鯨非難にも大きな影響を与えていたと私は思う。


映画『ブラックフィッシュ』(2013年)予告編 - 「シャチがトレーナーを食べてしまったんだ...」 - YouTube

シーワールドに対する非難

この映画の公開後、シーワールドの入場者数は激減していった。株価も大きく下がった。私がSNSでつながる海外の調教師たちも頻繁にこの話題を投稿していた。調教師個人に対して行き過ぎた抗議行動を行っていたこともあるようです。

今後シャチのショーはどうなるのだろうか?

サンディエゴのシーワールドでは来年にはショーが完全中止となる。シーワールドはフロリダなどあと2つのシャチを飼育する施設を保有しているが、おそらくそちらもショーはなくなるだろう。イルカやアシカなども先行きは暗いと思う。繁殖するしてはいけないと法律で決められた州もあるぐらいだから。

シャチ繁殖禁止のニュース:Ontario bans the acquisition and breeding of killer whales

調教師である私の考え

ショーが中止となることは残念でならない。昨年ごろから噂にはなっていたのだが、やはり完全中止となるのは正直言葉にならないほどの悲しさがある。ブラックフィッシュも見たが、本当のことだなと感じる場面もあったがそれ以上に、「盛ったな!」という部分も多く感じた。ザ・コーブもそうだったが、映画のすべてが真実ではないことだけは断言できる。アメリカのシーワールドと言えば世界の最先端である。ソフト面もハード面も、日本の水族館なんか足元にも及ばない。彼らが編み出した技術でどれだけの動物が救われたことか。彼らの論文からどれだけ私たちは学ばせてもらったことか。彼らがどれだけ多くの人々を楽しませ、感動させ、教育してきたことか。

水族館での研究が多くの野生のシャチを救ってきたことも確かだ。保護団体は何がしたいのか?水族館で繁殖を禁止するなどの愚行は、動物を保護したくないとしか思えない。今までも。そしてこれからも多くの研究で野生のシャチをいくら追いかけても絶対にわからなかったことをシーワールドは発見していくはずだった。その機会を彼らに邪魔されてしまうことは腹が立ってしょうがない。もちろん、ショーが中止されるだけで研究が中止されるかは決まっていない。しかし、このまま保護団体の圧力に屈しているようであれば、いずれその機会さえも奪われていくだろう。そして、決してアメリカやオーストラリアのような動物愛護活動が盛んな国だけの話ではない。日本のチンパンジーショーが消えたように、「ショー」が「パフォーマンス」と名称を変えたように、いずれ日本からもイルカショーが消え、水族館や動物園が消える日は来るだろう。そうすれば野生に暮らす動物は絶滅に向かって大きく加速する。時代の流れと言ってしまえばそうなのかもしれないが……。でも、ちっぽけな私ですが世の中のイルカのために精いっぱい教育や研究、そして繁殖を頑張っていこうと心新たにした1日でした。

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